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No. 39 (October 23, 2025) 乳製品

日本では戦後ずっと学校の給食で必ず出され続けている牛乳。例え牛乳という形では飲んでいなくても、チーズやヨーグルトや生クリームなどの乳製品や、パンやパスタやお菓子など、乳製品が原材料の一つである食べ物はそこら中に溢れているので、一日全く乳製品を摂らずに過ごしている現代人はあまりいないかもしれません。それほどもはや私達の生活に欠かせないものとなっている乳製品ですが、実は牛乳は日本人の食物アレルギーの原因として最も多い3つの食材(卵、牛乳、小麦)の一つでもあります。乳製品は果たして体に良いのか、悪いのか?努めて摂るべきなのか、避けるべきなのか?今回はこのことについて解説します。


まず、現代栄養学的に見てみると、牛乳はタンパク質、脂質、炭水化物の三大栄養素全てをふんだんに含む上、ビタミンB群やカルシウムも入っていて、栄養価的に大変優れたものであると言え、戦後子供達に推奨することで栄養状態の改善が期待されたことも納得がいきます。特にカルシウムに関しては、「牛乳と言えばカルシウム」、というようなイメージがある通り、一日に必要とされている量の約3割を一杯の量で摂ることができるほど、牛乳はカルシウムを多く含んでいます。昔から牛乳は骨を丈夫にすると言われていますね。では、乳製品の摂取が実際に骨粗鬆症の予防に繋がっているのかというと、実はそうではなく、スウェーデンのとあるスタディーでは、牛乳をたくさん飲んでいる人ほど骨折が多くなることが示されています。牛乳にはカルシウムがたくさん入っているはずなのに、何故でしょうか?


カルシウムは、ただ口に入れれば自動的に身に付くわけではありません。このことはカルシウムに限ったことではなく、他のミネラルや栄養素に関しても言えます。カルシウムは、胃袋を通り過ぎた後に小腸で吸収されますが、この時に胃酸に含まれる酸度が充分でなかったり、小腸の腸壁が炎症を起こしているような状態では、きちんと吸収さません。また、ストレスホルモンが多く分泌されている状態だと、カルシウムは尿から排泄されてしまいますし、タンパク質が欠乏しているとカルシウムも欠乏します。このように、カルシウムが体内できちんと吸収され利用される為には、揃わねばならない他の条件がたくさん存在します。


牛乳に含まれるタンパク質の8割は、カゼインと呼ばれるもので、これが実は消化がかなり難しいタンパク質なのです。人間の母乳にもカゼインは含まれますが、性質や構造が少し異なり、量も3~4割程度です。しかも、市販の牛乳は殺菌と腐敗防止のためにパスチャライゼーションという加熱殺菌がされているため、タンパク質が変質し、更に消化に負担をかけるものになってしまっています。本来の生の状態で飲めれば、牛乳の中に含まれる酵素がタンパク質の消化に貢献しますが、それもパスチャライゼーションで死んでしまっています。何種類かあるパスチャライゼーション法の中でも、常温保存を可能にする加工法は、超高温を使うためタンパク質を大きく変質させるので、消化にも他のタイプよりも更に大きな負担を与えます。


また、牛乳は本来搾ったものをそのまま放置しておくと、脂分が浮いてきて上の部分に層を作ります。しかし、現代の市販の牛乳でそのような状態になっているものはありませんよね?それは、攪拌(ホモジナイゼーション)という加工法を用いて高圧をかけ、脂肪を人為的に細かいサイズに分散して、牛乳全体に均等にムラなく混ざるようにしているからです。この攪拌という工程が、牛乳を飲みやすく保存しやすい形にするのですが、その代わり牛乳に含まれる脂肪を相当酸化させ、更に消化が困難なものに変化させてしまいます。


このように、今私達が普段口にする市販の牛乳は、人間の消化の臓器に大きな負担をかけるものとなっており、現代人の腸内環境の悪化と大きく関係しています。確かに牛乳それ自体の栄養価は高いのですが、加工の工程や消化の難しさを考慮すると、牛乳に含まれる栄養素のどれくらいが果たしてきちんと消化吸収され身に付いているのか、相当疑問ですし、消化の臓器に与える悪影響を考えると、他の食品の栄養素の消化吸収をも間接的に妨げている可能性が大です。


また、アメリカではオーガニックの牛乳が普通のスーパーでも簡単に購入できますが、日本ではそのような良質な牛乳は手軽には入手できませんね。オーガニック、もしくは有機ではない、一般の乳製品のほとんどは、グリホサートという除草剤がどっさりとかかった遺伝子組み換えのトウモロコシを飼料として育った牛の物であり、それだけではなく抗生物質やホルモン剤なども使用されていることが多いです。そのような乳製品を摂るということは、更に腸内環境にダメージを与えます。(グリホサートに関しては2022年4月の記事を、腸内環境に関しては2023年4月の記事を参照してください)


このように、一般の牛乳は、実は百害あって一利なし、と言っても過言ではないものなのです。牛乳以外の乳製品も、結局同じような加工がどこかの段階でされているので、基本的には同じです。たとえオーガニックの良質なものであったとしても、加熱殺菌や攪拌はされているので、乳製品はわざわざ努力して摂取するべきものでは決してなく、嗜好品として控えめに楽しむものである、というのが私達の考えです。


一つ、乳製品の消化の難易度を下げるものがあります。それは発酵です。発酵は、消化が困難なタンパク質や脂質を消化しやすい形にお膳立てしてくれるのです。例えば、しっかりと熟成させたナチュラルチーズは、その熟成の過程で病原菌の繁殖が抑制されるので、生乳で作られたチーズはアメリカではほとんどの州で合法であり、日本でも探せば入手が可能です。チーズの種類によっては、ビタミンK2も豊富に含んでいるものもあります。消化の臓器が健康な人なら、オーガニックで薬などを使用していない生乳のチーズであれば、多少食べても大丈夫かと思います。それに対してヨーグルトは、元々生乳で作っているものはありますが、必ず加熱殺菌を行ってから売られているので、発酵されているとはいえども、消化の難易度という点ではチーズには劣ります。


加熱殺菌、攪拌、グリホサート、抗生物質、ホルモン剤などの問題はさておき、そもそも日本人は牛乳に含まれる乳糖を十分に分解するだけの酵素を持たない人が多い、ということも覚えておかねばなりません。ミルクは本来赤ちゃんが飲むものであり、それも牛乳は本来牛の赤ちゃんが飲むものです。大人の人間が飲むようにはできていません。なのでやはり、あくまでも「嗜好品として」、少量もしくは時々摂るくらいにおさえるのが望ましいのです。


バターは、タンパク質や乳糖の含有量が少なく、約8割が脂質です。バターに含まれる脂質のほとんどである飽和脂肪酸は、熱に強く安定しているため、乳製品の中では一番加工の弊害を受けていないものになります。なので、脂分の消化に問題がない胃腸を持つ人であれば、カゼインや乳糖に過敏であったとしても、良質のバターを少量使う分には問題がない場合が多いです。バターをさらに精製させたギー(精製バターとも呼ばれます)は、ほぼ99%が脂肪なので、バターよりも安心して使うことができます。


アメリカでも、一般のスーパーでは生乳は手に入りませんが、だいたいの州では農家から直接生の牛乳や生のヤギのミルクを購入することが許されています。私達もニューヨークに住んでいた頃は、ペンシルバニア州のアーミッシュの農家から生の乳製品をよく取り寄せていました。生の牛乳は、ほんの2日ほどで酸っぱいにおいがしてくるほど、すぐにダメになってしまうのですが、味が濃くて本当に美味しいのです。日本では、自分の家で牛を飼うか、または個人的に酪農家にお願いする以外には入手法がないようですが、搾乳後すぐの生乳を飲むことができる酪農体験施設は各地にあるようなので、機会があればぜひ試してみてください。


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